企業向けサービス

お客様対応のポイント

衣料品・繊維製品におけるお客様対応のポイントについて説明します。

お客様が不満を感じる状況

商品の購入を通じてお客様が不満を感じる状況は、大別すると以下の3つと思います。

1)購入時
消費者が商品を購入するのは、その商品を購入・所有・使用することで満足や効用を得たいからです。
そして、購入する前にまずは情報収集をして、気に入った商品が見つかればそれを購入するという行動になりますが、ここまでで自分の期待にそぐわないことがあれば、不満が生まれます。
この中には「欲しい商品が無い」という品揃えの問題や、「値段が高い」という価格設定の問題も含まれますが、その場合は失望などを感じるとしても、大きな不満に至ることまでは少ないと思います。
(もちろん、このようなことに対しても苦情はあるため、貴重なご意見として受け止める必要はあります)
それでは、大きな不満を感じるのはどういう場合かと言うと、主に接客サービスに関わるものです。
例えば、疑問点があって質問したのに曖昧な返事しかもらえない、自分の意図を理解してもらえず期待外れの商品やサービスを提案された、決済方法が思っていたのと違った(ポイントが付かないなども含む)などで、消費者の勘違いや思い込みが原因であることもありますが、販売者側の知識不足や説明不足などによる接客内容(インターネット販売の場合は表示内容)が原因であることも少なくありません。

2)使用・保管時
使用や保管をしたら商品に不具合が発生したということが、消費者の不満の中で一番多い内容と思いますが、この場合はつまり、品質に対する不満ということになります。
そして、その原因は、商品自体が品質不良である場合と、品質不良ではなく消費者の使用や保管方法などに問題がある場合、または不具合ではないのに消費者が不具合と思い込んでしまっている場合があります。
いずれの場合も、下述のとおり企業としてはその原因を明確にして、消費者に説明する必要があります。

3)お申し出(苦情)時
上述の1)や2)で不満を感じた消費者は、販売元やメーカーにお申し出としてその苦情を伝えることになりますが、その際の接客対応の内容によっては新たな不満を感じることになります。
お客様からの苦情やその要求内容が企業側のルールでは受入れられないような過度なものであったために対応が叶わずトラブルになる場合もありますが、お客様の声に耳を傾ける姿勢が足りない、知識不足などで納得していただく説明が充分にできない、回答までに長期間お待たせした、などがトラブルの主な原因になります。

企業の消費者志向経営と消費者対応

消費者志向経営

まずは販売する側の企業を取り巻く環境について考えていきます。

マーケティングの観点から考えると、戦後の日本は以下のような企業主導型での考え方が展開されてきました。
1)プロダクトアウトの時代
​生産志向(大量に安く作る)→製品志向(良いモノを作る)→販売志向(広告など販促活動で売る)
2)マーケットインの時代
顧客志向によって顧客ニーズ(顧客の求めるモノ・顧客満足)を重視した製品・サービスを提供

しかし、現在はこのような企業主導型ではなく、消費者主導型での「消費者志向経営」が求められています。
消費者志向経営とは、簡単に言えば、上述の1)2)のような自社の利益や目的を目指す経営ではなく、消費者の利益の向上や権利の確保を考えの中心とした経営をしていくことです。

その中で、以下のような言葉がよく使われています。
①コンプライアンス経営
コンプライアンスは一般的に「法令遵守」と言われていますが、消費者に信頼される企業となるために必要なもので、コンプライアンス経営とは、社会的規範や倫理観などをベースに、公正かつ適切な経営を行うことです。
具体的には、法令を遵守するだけでなく、社会的な良識や規範を基にした活動、業界自主基準やガイドラインの遵守、社内規則の策定と遵守、消費者や近隣住民からの要請の対応などを行うことです。
②コーポレートガバナンス
コーポレートガバナンスは「企業統治」と言われていますが、不祥事の防止や収益力の強化などを目的として、経営の透明性・健全性・遵法性などを確保することです。
そして、その情報はステークホルダー(株主だけでなく消費者や社員や社会・地域までも含めた利害関係者)への適切な開示・説明責任が求められています。
③企業の社会的責任(CSR)
企業の社会的責任(CSR)とは、企業が利益を追求するだけでなく、社会に与える責任や貢献に配慮しながら持続的な成長を目指す活動のことです。
自社の影響に対して責任を果たすために、適切な消費者対応、労働環境の改善、社会や地域への貢献、環境や人権への配慮、投資家からの好評価、などが求められています。
 

消費者対応


上述のような状況の中で、企業の消費者対応に求められている事は具体的にどのような事でしょうか?

消費者対応は、企業によって、専門の部署が行っていたり、営業・商品管理・生産管理・品質管理・総務などの部署が兼任で行っていたり、小売店舗の販売員が直接対面で行っていたりなど、様々な状況がありますが、いずれの場合でも自社の代表として対応することになります。
そのため、良くも悪くも、その対応内容が消費者の自社に対する印象・評価につながる事を意識する必要があります。
そして、親切丁寧な対応をする事はもちろんですが、消費者にとって親切丁寧とは実際には何をする事なのかを考え、最終的に顧客満足(CS:Customer Satisfaction)につながるような対応をする事が重要です。
仮に消費者からの要求が自社では叶えられないものだったとしても、簡単にお断りして終了するのではなく、その要求の意図を汲んで対応内容を工夫すれば顧客満足につなげる事が可能です。

それでは、顧客満足が得られる対応とはどのようなものでしょうか?
消費者からの声は、具体的な商品・サービスに対する内容が多いと思いますが、それらの品質や制度などへの苦情だけではなく問合せ・要望など様々な形で届けられ、いずれの場合でも以下の対応が必要となります。

1)傾聴する
まずは不快な思いへの謝罪をした後、消費者からの申し出にしっかり耳を傾けて、その内容の本意を理解する。
商品・サービスのどの点に対してなのか、どのような内容(苦情・問合せ・要望)なのかを判断する。
例えば、怒鳴り口調だとしても苦情とは限らず、問合せや要望の場合もある。
いずれにせよ、この段階で本意が正しく理解できなければ、その後の対応が不適切になり、消費者がそれに苛立って更なる苦情に発展したり、上司による対応(エスカレーション)が必要になる場合もある。

2)最良の対応方法を考える
申し出に対応する前に、どのような結果を希望されているのか考える。
希望されている結果が曖昧な場合は、どうなれば希望通りかを聞いても良い。
その希望が自社として叶わないとその場で判断できる場合は、できそうな代替え案を提案して消費者の同意を得る。

3)迅速に対応する
自社として2)への対応が可能かを確認し、対応する。
この段階で対応が叶わないとわかった場合は、消費者へ謝罪の連絡をし、できそうな代替え案を提案する。
重要なのは消費者視点で考える事と、迅速に対応すること。
空白期間が長くなるほど、消費者は放置されたと思って苛立ちや失望を感じて、説明を受入れにくくなる。
どうしても対応に時間がかかるものについては、予め回答の日程を伝える。

4)納得のいく回答をする
消費者に対応完了の連絡を入れると同時に、問題発生の原因を説明する。
この時に、企業側の都合で発生した問題や解決できなかった問題については、再発防止を社内で検討する旨を伝える。
原因説明の際は、専門的な内容が求められる事もあるため、予め専門部門からその点の知識を得ておく。

消費者は、予め希望した結果が得られなければ全て不満で終わるという事ではありません。
希望を丁寧に聞いてもらい、それに対して精一杯努力をしてくれた、納得のいく説明も聞くことができた、となれば、例え希望が叶わず、その理由が企業側の都合によるものであったとしても、満足される事も多くあります。
そして、それらの対応に対して感謝される事さえも多くあります。
つまり、人と人との気持ちのつながりが重要であり、それが消費者の心を動かすという事です。
 

更に、企業として以下を行う事も重要であり、これがまさにコンプライアンス経営やCSRにつながります。
①対応が必要な目の前の顧客だけでなく、ホームページへの意見投書など、潜在顧客の声も重視する
②消費者からの声(VOC:Voice of Customer)を企業行動や経営にフィードバックする
③②によって実施した企業行動の内容を情報発信する

衣料品・繊維製品の品質苦情に対する対応

衣料品・繊維製品の品質苦情については、どのようなものが多く、どのような対応が必要でしょうか?

お客様からの申し出については、まずは上述通りその内容を傾聴しますが、そこで商品の品質に対する苦情だとわかった場合は、更に以下をヒアリングします。

1)苦情内容
洗濯したら縮んだ、ほつれた、変色した、他のものに色が移った、劣化した、臭う、異物が混入している、表示されている機能性が感じられない、など
2)不具合が発生した経緯
どのような使用や保管をした時に、どのような状態になったか
3)対応への要望
修理・交換・返品、被害品(他のもの)の損害補償、原因調査、機能性表示の根拠提示、正しい使い方の提示、など

ヒアリングによってお客様の要望がわかれば、次にはその対応を進めていくことになりますが、品質苦情の場合はその発生原因が以下のどれなのかによって対応内容を変えなければならない場合があるため、対応の前に原因の確認を行います。
①製品起因(品質不良)
②お客様の取り扱い起因(使用・保管方法に問題がある)
③誤認(不具合ではないのに不具合と思い込んでいる)
つまり、お客様が交換や返品を希望されているとしても、原因が②の場合は企業としてその対応をすべきかを判断する必要があり、原因が③の場合はそもそもその対応をする意味があるのかを判断する必要があるという事です。

発生原因は、ヒアリング内容だけで概ねの推測が可能なものと、実際の苦情品を見なければ推測が難しいものがあり、後者の場合はその苦情品を取り寄せることになります。
その際、原因調査のために製品の破壊検査が必要な可能性があるため、お客様にはその可否を確認します。
苦情品を外観で見る限りでの所見をお伝えすれば良いのか、破壊してでも正確な調査結果をお伝えすべき案件なのか、ヒアリング内容やお客様の温度感によってそれを推察して、お客様に確認するということです。
既に使用が難しい状態になっている製品であれば、お客様も破壊することに抵抗はないと思いますが、まだ使用可能な製品の場合は、製品の所有権(つまり返金)について決める必要があり、また、プレゼント品や購入後に何かの加工をしたものなど、お客様の思い入れがある製品は破壊を希望されない場合もあるため、その点でも確認が必要です。

苦情品を見るなどして原因を推定した後は、お客様にそれを伝えて実際の対応をすることになりますが、上述の通り、お客様の取り扱い起因や誤認の場合は、お客様の要望通りの対応が叶わない事や、その理由として説明した推測原因に納得されない事で、トラブルになることも少なくありません。
そして、トラブルになるか否かの傾向は、苦情内容によって以下に分類することができます。
※但し、これらは全て事前検査で合格品であることが前提です。また、代表1点での検査に合格していても、一部の製造ロットに問題があった可能性もあるため、その点は注意が必要です。

Ⅰ)原因が推測しやすくトラブルになりにくいもの
ⅰ.ほつれ・穴製造起因(生地不良・縫製不良)が多い編物は引っ掛けによるものも多く、その場合は製品起因(販売店で陳列時に発生した場合も含む)なのか、取扱い起因なのかの特定は困難だが、穴の発生部位や数などによって概ねは推測可能
ⅱ.洗濯による縮み・変形
布帛製品:過酷な取扱いをしない限り、あまり発生しない
カットソー製品:多発している場合は製造起因、2回目以降の洗濯で発生した場合は取扱い起因と推測
ニット製品:洗濯・乾燥による取扱い起因が多い
ⅲ.汚れ・変色
多発している場合は製造起因、未使用の場合を含め使用・保管状況の聞き取りや発生部位・状況で概ね判断できる
ⅳ.異臭
製造起因の場合と、お客様の誤認による場合が多く、お客様の取り扱い起因による場合は比較的少ない製造起因の場合は多量に発生する事が多く、販売前の店頭などで発見されることも多いため、販売後の単品苦情の場合はお客様の誤認であることが少なくない
但し、お客様の誤認であっても、臭いの感じ方は人によって異なるため、安易に「問題無い」と対応すると以下Ⅱ)のようにトラブルに発展する可能性がある
ⅴ.異物混入
混入した異物や製品中の混入部位などで概ねは推測可能
但し、もし製品起因とは考えにくい状況であっても、販売店での陳列時などで混入した可能性もあり、お客様が感じたヒヤリハットの状況も汲んで、交換・返品で対応することが一般的
また、異物が針や鋭利な物などの危険物であった場合、混入の原因に関わらず、まずはお客様の怪我などを確認して、その対応も行わなければならない

Ⅱ)(お客様の取扱い起因・誤認が大半だが)推測した原因に理解が得られずトラブルになりやすいもの
ⅰ.変色・汚染(移染)
変色は、過酷な取扱いが原因である事が多いが、お客様としては過酷な取扱いをした意識が無いことが多い
汚染は、注意表示などがあっても、お客様の所有物に色移りした場合は特に、理解を得るのが難しい
ⅱ.ピリング
ⅰと同じく、お客様としては過酷な取扱いをした意識が無いことが多い
但し、毛玉取り器で容易に取れることを伝えると、理解が得られやすい
ⅲ.毛羽脱落・毛羽付着・パイル抜け・羽毛吹き出し
ⅰと同じく、お客様としては過酷な取扱いをした意識が無いことが多い
また、異色濃淡組み合わせで使用すると、淡色製品の毛羽が組み合わせた濃色の衣類に付着するなどして目立ちやすくなるが、それを避けるような注意表示を付けても、実際にそれを意識して使用される事はあまりない
羽毛については、羽毛布団の羽毛が布団カバーの中に残り、こまめに洗濯しなければ累積するため、苦情になりやすい
ⅳ.ポリウレタン使用製品・平ゴムなどの劣化
過酷な使用環境と経年劣化の組み合わせが原因となるが、お客様としては「同じような製品を同じように使用したのに、この製品だけが劣化した」と感じられる事が多い
但し、製造後から販売までの期間が長いと、お客様が購入時には既に劣化が進行している場合もあり、販売側でも在庫管理に注意が必要
ⅵ.表示の機能性が感じられない
機能性は人によって感じ方が異なるため、その製品の効果優位性を説明しても、理解が得られない場合がある
但し、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料が無いまま販売されている場合も見られ、その場合は景表法(不当景品類及び不当表示防止法)に抵触することもあるため、十分な注意が必要

尚、お客様が苦情の常習者(いわゆる「クレーマー」)ではなく、返金ではなく修理・交換を希望されている場合は、原因の確認はせずにその場で要望に応じることも多いようです。
それによってお客様の満足度が高まるだけでなく、原因調査やその後の対応などに更なる時間や費用が必要になることを考えれば、正しい選択であると思います。

CONTACT お問合せ

お気軽にお問合せください

 

※フォームお問合せは24時間受付中