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貿易のポイント

衣料品・繊維製品のモノづくりにおける貿易のポイントについて説明します。

貿易の流れとその内容

海外の工場で商品を製造する場合は、それらを日本に輸入するという貿易業務が必要となります。
しかしながら、貿易業務は非常に専門的で、専門用語も多く出てくるため、慣れない人にとっては非常に難しいものと感じるはずです。
また、輸送方法や決済方法も多くあるため、どれを選んだら良いのかよくわからないという悩みも出てきます。
社内に貿易を担当する専門部署があれば任せてしまっても良いですが、契約条件の判断をするためにも最低限の知識は必要です。
不慣れな場合は知識や経験のある人に教わる、JETRO(日本貿易振興機構)・日本繊維輸入組合(JTIA)などが開催するセミナーを受講する、フォワーダー・乙仲・通関業者などの専門家に相談する、などするとよいでしょう。



このページでは具体的な貿易業務の内容について述べていきますが、上述のとおり貿易業務は広範囲で専門的になるため、主なポイントのみ説明します。
 

貿易の流れ

一般的な貿易の流れをマップにすると以下となります。

品質管理のプロセスマップ

このマップは、決済条件を「L/C(Letter of Credit:信用状)決済」とし、輸送は貨物船による海上輸送としていますが、上述のとおりこれ以外にも多くの方法があるため、その他の方法については下述します。

契約書の内容

貿易業務で最も重要なことは、まず始めに売り手と買い手の双方が合意した内容で契約書を取り交すことです。
また、契約書は、必要事項を漏らさず、正確に記載しなければなりません。
これらの内容が不足していたり曖昧だったりすると、後の輸出時に様々なトラブルが発生することがあります。
契約書は少なくとも以下の項目を明記したものを2通作成し、調印後に両社が保有します。

ⅰ.数量
基本的に発注数量で契約しますが、増減産に対する許容も記載します。

ⅱ.金額
製品ごとの単価と、数量を乗じた総金額を記載します。

ⅲ.納期
貨物の引渡し期限日を記載します。

ⅳ.品質
詳細な品質基準は記載できないため、以下のような広範囲がカバーできるような文章で記載すれば良いかと思います。
「Buyer's and User's inspection to be final(買手と使用者の検査基準を最終的なものとする)」

ⅴ.輸出条件(Trade Terms)
インコタームズ(International Commercial Terms)で定められた方法を使うのが一般的です。
代表的なのは以下の4つですが、売り主が買い主に貨物を引き渡す場所や水濡れ・破損などのリスクに対する危険負担の範囲によって分類されています。
また、貨物の引渡し地はこれら条件によって異なるため、それに合わせた場所も記載します。
FCA「Free  Carrier(運送人渡し)」:売り手が買い手の指定した輸出国内の運送人に貨物を引渡した時点で契約履行となり、それ以降の費用・危険は買い手の負担になる(但し輸出通関費用は売り手負担)
FOB「Free  on Board(本船渡し)」:売り手が買い手の指定した輸出国の本船に貨物を船積みした時点で契約履行となり、それ以降の費用・危険は買い手の負担になる(但し輸出通関費用は売り手負担)
CFR(C&F)「Cost and Freight(運賃込み)」:売り手が買い手の指定した輸出国の本船に貨物を船積みした時点で契約履行となり、それ以降の危険は買い手の負担になる(但し海上運賃は売り手負担)
*CFRの場合は海上運賃が売り手負担で本船を選ぶことができないため、運賃は安いが船足が遅いなどの船が使用される可能性があります。運賃が高額でも船足が早く安全な本船を使用したい場合は、FOBにするほうが良いでしょう。CIF「Cost Insurance and Freight(運賃保険料込み)」:売り手が買い手の指定した輸出国の本船に貨物を船積みした時点で契約履行となり、それ以降の危険は買い手の負担になる(但し海上運賃と保険料は売り手負担)
*CIFの場合は海上保険料が売り手負担で保険会社などを選ぶことができないため、有事の際に十分な保険金が支払われないなどのトラブルが発生する可能性があります。そのような懸念がある場合は、CFRやFOBにするほうが良いでしょう。

ⅵ.決済条件
決済方法も様々なものがあり、代表的なのは以下の4つですが、予め売り手と合意した内容を記載します。
L/C決済:開設時に取決めた通りの書類を提示する事を条件に銀行が為替手形の買取りを保証する方法で、取消可能/不可能や確認/無確認などの種別の他に、ユーザンス(Usance:支払までの猶予日数)を設定する事もできる
D/P(Document against Payment)決済:船積書類・荷為替手形と引換えに代金決済される方法で、売り手が書類を銀行に持込み、それを買い手側が決済する事で書類が引渡され、売り手側にも支払いが行われる
D/A(Document against Acceptance)決済:船積書類・為替手形と引換えに代金決済される方法で、売り手が書類を銀行に持込み、それを買い手側が手形に記載された期日の決済を約束する事で書類が引渡される
T/T Remittance(電信送金)決済:売り手側が送付したB/L(Bill of Lading:船荷証券)を含む船積書類を買い手側が受取り、貨物を引取った後に電信送金する方法だが、売り手の代金回収リスクが高いため、サンプルなどの少額決済が主となる

ⅶ.必要な船積書類と通数
上記の輸出条件や決済条件などによっても変わりますが、売り手が発行する船積書類として必要なものとその通数を記載します。
一般的には、INVOICE(請求書)・PACKING LIST(梱包明細)・B/L(船荷証券)をそれぞれ3通必要とします。

ⅷ.その他
必要に応じて以下の項目などを記載します。
契約No.・輸出港・仕向港・分割輸出や積替の可否・保険内容・梱包方法・Shipping Mark(貨物の箱などに表示する目印マーク)
 

貿易実務

通関はフォワーダーなどの業者に任せることになるため、その点では貿易実務として行うことは特に無いかと思いますが、契約・銀行とのやりとり・売り手との書類の受渡しは自社が中心となって行うことになるため、これらの点での注意事項について以下で述べます。

<契約時の輸出条件の決定>
輸出条件は上述の4つのいずれかを選ぶことが多いですが、QCD(Q:安全性  C:コスト  D:納期)のどれを優先するかによって、ほぼ自動的に決まることとなります。
上述にも記載の通り、コストを優先するならCIFやCFRを選ぶことになりますが、安全性や納期を優先するなら買い手側に都合の良い本船を選ぶことができるFOBやFCAを選ぶことになります。
また、売り手側との信頼関係が出来上がっていて、買い手側が指定した本船を選んでくれるのであればCIFやCFRでも良いと思いますが、保険の保障を考えるとCFRのほうが良いと思います。
但し、同地域で他の工場でも商品を生産しておりそれらをまとめて同時に輸出できる状況、そして、同地で数社の工場の貨物を取りまとめてくれる運送業者がある状況ならば、FCAを選んでフルコンテナ(※)で輸出するほうがQCD全てに有利となります。
(※)海上輸送の場合、貨物はコンテナ単位で船に積まれますが、コンテナ1本全てを使用するフルコンテナ(FCL)を選ぶほどの輸出量が無い場合は、他社貨物と混載する混載コンテナ(LCL)を使用することになり、QCD全ての点でフルコンテナより条件が悪くなります。

<契約時の決済条件の決定>
決済条件は売り手と買い手の利害が背反する部分です。
買い手としては、貨物を入手してから(場合によってはその製品を販売した後に)ゆっくりと支払うのが理想ですが、売り手にとっては代金回収や金利負担などのリスクが増えるため、買い手が貨物を入手する前に代金回収できるのが理想です。
買い手側に有利な条件は以下の順となりますが、それらのどこまでを売り手が同意してくれるのかは、今までの取引内容・契約に至るまでのやりとり・買い手側の企業規模や評判などで、いかに買い手側に信頼性を感じてくれるかによります。
           TT決済(後払い) > D/A決済 > D/P決済 > L/C決済 > TT決済(前払い)
長期間の継続取引の中では、品質や納期上の問題などでクレーム交渉をすることが出てきますが、このような点からも信頼関係は重要なため、せっかく築き上げたものを簡単に失わないよう、配慮をしながら交渉を進めることをお勧めします。

<銀行とのやりとり>
銀行とのやりとりは、企業の場合は​財務会計などの部局が行うため、直接の業務に携わることは無いと思いますが、L/C開設や送金には時間がかかるため、それらにどの程度の日数がかかるか、量産開始や輸出までのスケジュールに余裕があるかなどを確認しておきます。
(資金の余裕によって決済条件が限定される場合もあるため、それらも確認しておきます)
また、決済が円建てではなく外貨建ての場合は為替予約することが通常ですが、それをどのタイミングで、どの程度の金額で行うかも予め確認しておきます。
外国為替のレートは日々変わっていきますが、プロでも予測が難しいと言われています。
製品を輸入する場合は円高のほうが有利になりますが、その動向がわからない以上は、リスクを分散するために何回かに分けて予約するほうが良いと思います。
例えば、契約時に必要な全金額の半分を予約し、残りは船積み前に予約するなどです。

<書類の受渡し・通関>
売り手側が輸出を完了すると売り手側から船積書類が発行されますが、これらは輸入通関に必要なため、即座に通関を依頼している業者(フォワーダーなど)にその書類を渡します。
前述通り、船積書類は一般的にINVOICE・PACKING LIST・B/Lとなります。
但し、この中でB/Lは容易に入手できない書類です。
その理由は、B/Lが「船荷証券」の名の通りお金と同様な価値があるからで、貨物の引換証であるからです。
B/Lは、輸出時に船会社が貨物を引取った証明として発行し輸出者に渡すものであり、この原本を輸入者が入手して日本の港に到着した船会社に差出すことで貨物を引取り、通関することができます。
つまり、売り手側にとってはこのB/Lを買い手側に渡してしまうと貨物を引取られてしまうため、安易に渡すことはできず、そのために「容易に入手できない」書類となるわけです。
例えば、L/C決済ではこのB/Lは銀行経由で回付され、買い手側が支払いに応じた場合に引渡されるようになっており、その点で売り手側にこのようなリスクが無い決済方法となります。
とは言え、中国などの近隣国からの輸入では本船が2~3日で日本に到着するため、本船が日本に到着しているのにB/Lが入手できず通関できないという問題が起きます。
更に、航空便(Air)で緊急輸出をしてもこの状況になるなら、高額の運賃を支払って輸送する意味がありません。
そのため、実際には「サレンダー(Surrendered)B/L」や「海上貨物輸送状(Sea Way Bill:航空貨物の場合はAir Way Bill)」などの方法によって銀行を通さずに船会社から貨物を引取ることがよくありますが、これらのどの方法が実際に適当なのかはフォワーダーに相談すると良いでしょう。
尚、L/C決済の場合は、買い手側が貨物を引取ったとしても売り手側は船積書類を銀行に持込めば代金回収はできるため、その点で売り手側にとってのリスクは回避できますが、もし書類の記載内容に条件不一致などがあればディスクレ(Discrepancy)となって支払いは行われないため、リスクはゼロではありません。
いずれにしてもこのような方法で貨物を早く引取るためには売り手側の同意や協力が必要なため、やはり平生での両社の信頼関係が重要となります。

<輸入通関時のValue評価>

輸入関税は、通常は輸入品のValue(商品価格や海上輸送費など)のみを対象として計算されるものですが、他にもその輸入品にValueが存在する場合は、それらも対象となります。
例えば、生産した現地で第三者機関に検品をしてもらった時の費用、別会社に品質・生産管理業務などを委託した時の業務料などです。
これらの費用が商品のValueを上げるための付加価値と判断されれば、それに対する関税も支払わなければなりません。
そのため、これらの費用を輸入者側が支払っている場合は特に注意が必要です。
生産者が現地で費用を支払っている場合は、通常は輸入品の価格に算入されているため別途申告する必要はありませんが、輸入者側が支払っていて通関時にその申告をしなかった場合、後で指摘を受けて追徴課税を支払うケースが見られます。
但し、これらの費用は輸入者側の買付けのために発生したものであり、商品に対する付加価値ではないと認められれば関税の対象にはならなくなります。

免税措置

貿易を行う上で輸入時の関税は大きなコストとなりますが、免税措置を受けることもできます。
主な制度としては以下があります。

1)暫定8条(ざんぱち)
日本製の生地や付属品などの資材を生産国に輸出して製品化する、つまり加工貿易を行う場合は、関税暫定措置法第8条が適用となります。
製品の輸入時に、本来は加工賃だけでなく使用した資材全てにも関税がかかりますが、この暫8を利用することで日本から輸出した資材部分については免税となります。
もちろん、日本ではない第三国で製造をして生産国に三国間貿易で送り込んだ資材は免税にはなりませんが、日本製の生地を使う場合は製品原価の中で生地代が占める割合が大きいため、かなりのメリットになります。
但し、予め日本で資材の輸出通関をする時に暫8適用を申告する必要があるため多少時間がかかること、また、そのための手数料も発生しますので、少量の資材を輸出する場合は適用が割に合うものなのか判断する必要があります。

2)EPA(経済連携協定)
EPA(Economic Pertnership Agreement)は、幅広い経済関係の強化のため貿易や投資の自由化・円滑化を進める協定で、締結されている国からの輸入関税は撤廃されてゼロになっています。
例えば、東南アジアではタイ・ベトナム・インドネシアなどがその対象国です。
関税がかからないのは非常に魅力的なことであり、中国の工賃高騰などの影響もあるため、これらの国での生産はますます増えると思われます。
但し、この制度を利用するためには対象国(または対象域内)で製造されたという原産地証明書が必要で、その内容次第では適用にならなかったり、中国製などの対象域外で製造された材料を使用している場合は適用外になるため注意が必要です。
輸出国によって条件なども異なるため、予めフォワーダーなどに確認しておきましょう。

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