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生産管理のポイント

衣料品・繊維製品のモノづくりにおける生産管理のポイントについて説明します。

生産管理の内容

生産管理は「衣料品・繊維製品のモノづくり」で述べた「QCD」の全てを管理します。

 Q:Quality(品質)
 C:Cost(コスト)
 D:Delivery(納期)

管理内容の詳細は以下で述べますが、アパレル企業などでの生産管理の業務範囲は、企画・製造・販売から在庫管理まで、モノづくりの全てのプロセスに関わる広範囲なものです。
製造工場とのやりとりやその管理が主な業務と思われがちですが「企画・設計・製造・市場対応」の全てのプロセスに関わることが望ましいものになります。

例えば、企画プロセスについて、商品企画はモノづくりの技術があってこそ成立するものです。
取引工場にその技術があるかを見極められるのは、その工場にいつも足を運んでいる生産管理担当です。
そのため、企画段階で行う工場選定は、生産管理担当が関わることが望ましいと言えます。
逆に、生産管理担当は、取引工場の持つ技術や新しく開発された技術を企画担当と共有して、新しい商品開発をサポートする必要があります。

設計や製造のプロセスが生産管理担当の業務範囲であることは言うまでもありませんが、市場対応プロセス、つまり販売時に発生した品質問題の原因調査や改善策の立案も生産管理担当が主体となって行います。
これについても、製造工場の状況を最もわかっていることや、日ごろの工場との付き合いで培われた人間関係などが非常に重要になるからです。
また、改善策の内容によっては、今後のコストや生産リードタイム(納期)に影響があるため、その点の判断が行えるのも生産管理担当です。

それでは、具体的な生産管理の業務内容について述べていきますが、上述のとおり生産管理の業務範囲は「モノづくりの全てのプロセス」となり広範囲になるため、主なポイントのみ説明します。
 

品質管理

1)工場選定・評価
上述のとおり、モノづくりはその技術があってこそ成立するものですから、工場選定は非常に重要です。
その工場から技術提案を受けたり、コスト上の魅力があるなどの理由で、企画担当が工場選定を主導することもありますが、多くの工場を見て技術の見分けがつく生産管理担当が最終的な判断をする必要があります。
(会社によっては、事業責任者が選定に加わり、最終判断をする場合もあります。)
新規取引工場を選定・評価する場合は、書類上の確認だけではなく、必ず現場を訪問して確認を行います。
その際に、評価方法を統一するための「調査票」を作成すると良いでしょう。
調査票の点検項目は様々にありますが、以下を主な視点とします。
①会社概要
設立年度(経験年数)・資本(経営安定性)・年商(事業規模や生産キャパシティ)・代表者(事業経験や設立経緯)・立地(面積や輸送条件)・設備(建物や機械)・従業員(人数や男女比や年齢比)・労働環境(労働時間数や賃金)・主要取引先(取引条件や要求内容)・主要生産品目(製造経験)
②品質管理・生産管理の体制
正しい管理が可能な組織・明確な管理方法・客先指示の理解
③設備の管理
設置位置や方法・メンテナンス・危険物管理
④材料保管の管理
保管位置や方法・温湿度環境・汚れ防止・数量管理
⑤従業員の管理
雇用条件・教育プログラム・5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)・私物持込み

2)量産準備の確認
量産に向けて必要なモノが全て揃っているか、また、それぞれの品質について確認します。
確認事項は様々にありますが、以下を主な視点とします。
①仕様書・指示書・パターン(型紙)
②量産材料(生地・副資材など)
③先上げサンプル
尚、パターンはCADで作成後にDXFファイルなどにして製造工場にメール送信することが多いと思いますが、製造工場が持つCADとのデータ互換性(寸法差異や型崩れ・内部線などの情報欠落)を予め確認しておくほうが良いでしょう。
*これらの詳細は「品質管理のポイント品質管理のプロセスとその内容」でも述べていますので、そちらをご覧ください。

3)量産の製造状況

2)の段階で問題が無いと思っていても、製造工場での量産が始まると色々な問題が発生するものです。
問題が発生していても、製造工場から報告がされず自己判断で処置されてしまっていることや、自ら気が付かずに生産進行していることもあります。
量産品の製造中はできるだけ製造工場を訪問して、現場を確認するようにしましょう。
問題を早期発見・解決することや、製造現場を見て今後の発生が予測される問題を潰すために、製造が開始された直後のタイミングで訪問するのが望ましいです。
*これらの詳細は「品質管理のポイント>品質管理のプロセスとその内容」でも述べていますので、そちらをご覧ください。

4)販売後の対応
上述や「品質管理のポイント>品質管理のプロセスとその内容」でも述べているとおり、販売時に発生した品質問題の原因調査や改善策の立案も生産管理担当が主体となって行います。
 

コスト管理

製造工場からの見積り確認を含む、製造原価の算出は生産管理の重要な業務です。
まずは原価要素を以下の3つに分解して計算します。
①材料費
②加工賃
③輸送費

①材料費
製品化に必要な材料を全て列挙して、要尺(または個数)×単価 で製品1点あたりの費用を計算します。
生地の要尺はCADでマーカー(型入れ図)を作成して計算しますが、あまり詰込みすぎると裁断時に問題が発生する場合があるため、製造工場とマーカーを共有して相互確認するほうが良いでしょう。
また、要尺はロス(不良などの仕損や残余)を考慮して決める必要があります。
②加工賃(CMT,CMP)
CMTは製品加工賃の事で「Cutting(裁断), Making(縫製) and Trimming(仕上げ)」の略です。
Cutting(裁断), Making(縫製) and Packing(梱包)」としてCMPと言ったり、CMPTという場合もあります。
加工賃は、それを決める正確・公平な基準が無いため、製造工場との単価決めに最も苦労する部分と思います。
1着の製造時間を工程ごとに細かく計算してそれを合計するという方法がありますが、1型の製造数が少ない・多数の型を製造するなどの場合は、このような時間のかかる作業をすることがリーズナブルとは言えす、製造数が増えると効率が上がるなどのその他要因が考慮されないため、この方法で単価を決めることは現実的には少ないでしょう。
一般的には、今までの契約で決めた似寄り製品での単価をもとに、数量・時期(繁忙/閑散)などを考慮して決めるのが妥当と思います。
③輸送費
国内工場であれば輸送費は比較的計算しやすいですが、海外工場の場合は輸出条件(FOBやCIFなど)によって異なり、通関費用や関税も計算しなければなりません。
また、輸送コンテナ詰めをフルコンテナ(FCL)にするのか、混載(LCL)にするのかも費用に影響するため、この点も計算して条件を決定しなければなりません。
知識や経験が必要になるため、不明点や疑問点はフォワーダー・乙仲・通関業者などの専門家に確認するとよいでしょう。

現在では、製造工場が①の材料を指定メーカーから購入したり、自社ルートで独自手配したりして、製品で売買することが多くなっています。
これにより、材料費に関わる実際の購入単価やロスを含めた要尺などが見えづらくなり、上記の①から③を正確に算出して値決めをするのが難しくなってきています。
そのため、製造原価の決定やそのための製造工場との値決めは、以下のいずれか、またはそれらを組合せて行うことが考えられます。
1)原価の積上げ
上記の①から③を加算する
2)既存製品との比較
既存製品で決めた単価をもとにして、その変更点を妥当な方法で評価・反映して決める
3)市場販売価格の考慮
競合他社で似寄り商品が販売されていて既に相場がある場合は、その販売価格が市場要求価格である、そして、それに基づいた原価が妥当な製造原価であると考えて決める(1)や2)の方法で算出した原価と大きく異なる場合は、他の発注製品の売買価格と合わせて全体で調整する)

尚、コスト改善の方法は、上記の①から③を見直すということになりますが、特に②の加工賃については、安易に製造工場を変更して見直すのではなく、まずはその製造工場との付き合い方を見直すことをお勧めします。
その理由は、製造工場を変更してもコストが下がるとは限らないからです。
一般的には、加工賃が低い工場は品質も低いと考えられます。
つまり、実際に製造してみたら不良品が多く、Fコストが多くかかることが考えられます。
また、製造技術などに大きな欠陥があって改善が難しいという理由で変更する場合を除きますが、製造工場を変更すると今まで両社で蓄積してきた技術共有・供与や信頼関係を全て失うこととなり、新工場でそれを再び築き上げるためには時間とコストがかかります。
単に加工賃が低いとしても、このような目に見えないコストも考えるべきです。
次に、既に取引のある製造工場の加工賃を下げる具体的な方法については、上述のとおり「付き合い方を見直す」ということですが、「発注数量を増やす」「継続的に発注する」などの規模の経済性を高めるということだけでなく、精神的な信頼関係を高めるということも必要です。
例えば、「不良品やクレームを発生させない(事前準備をしっかり行って量産時の問題を潰す)」「納期遅延を発生させない(無理なスケジュールを組んで製造工場を困らせない)」ということを行っていくと、製造工場はリスクやロスに対して安心感が出るため、加工賃の見直しにも協力が得られるようになります。

納期管理

生産管理担当としては、納期は絶対に守らなければならないものであり、非常に重要なものですが、その正しい方法が確立されていないため、どのようにすれば良いのかわからないという方もおられると思います。
そのような場合は、品質管理の品質改善で使用する「PDCA」を流用することをお勧めします。

1)Plan(計画)
納期管理のために最も重要なのは、実はこのプロセスです。
無理なスケジュールを組んで、それを守るというのはそもそも困難です。
製造工場から協力を得られずに納期が遅延したり、無理に急いで製造すると不良品が多発する原因となります。
スケジュールに無理が無いかしっかりと計画してから納期設定しましょう。
特に、以下の点に問題が無いか細かく確認し、それを社内関係者と製造工場に共有し、関係者が全員同意の上で進むことです。
①量産開始までの準備
②量産材料や縫製工場での製造キャパシティ確保
③量産での日々の上がり数量
④輸送スケジュール
企画開発が遅れたために製造スケジュールにしわ寄せがいくということがよく見られますが、上述のとおり結果的に問題が発生して大きな失敗につながる場合があるため、まずは社内でそれを十分理解して、余裕のある納期設定をすることが重要です。

2)Do(実行)
計画した通りに実行していきます。

3)Check(検証)
計画した通りに実行されているか、日々確認を行います。
上記①「量産開始までの準備」については、それぞれの完了日が遅れていないかを確認します。
上記③「量産での日々の上がり数量」については、予め製造工場から日々の上がり数量予定を入手しておき、その通りに進んでいるか進捗確認をします。
そして、縫製工場から日々の上がり数量の報告を受け、予定との差異があればその原因を即座に確認します。
これによって、納期管理だけでなく、「遅れているのは何か問題が発生しているからではないか?」という品質管理にもつなげられます。

4)Action(改善)
計画通りに製造が進捗していない場合は、改善策を考えて実施します。
納期設定を見直すことができれば良いですが、それができないことが多く、一般的には納期遅延分の輸送方法を船(Ship)から航空便(Air)に変えて何とか間に合わせる、という方法が多くとられています。
ここで重要なのは、納期遅延することが発覚しても「なし崩し的に製造を継続してその結果だけに対処する」ことが多いということです。
そもそも上記1)のようなしっかりとした計画や3)のような日々の進捗確認をしていなければ、このような製造途中での問題発見ができないため、製造工場から遅延報告を受けた時には既に手遅れで何もできなかったということも多くあります。
この場合は、なし崩し的に製造を継続せず、問題の内容と原因を早急に調査して取除く努力をしましょう。
これによって少しでも改善がみられる場合があります。
一方、上述通りしっかりと計画・進捗確認したのに納期遅延が発生したのであれば、「何か突発的な事故が発生した」「元々の計画が甘かった」のどちらかです。
今回の製造については改善が難しいと思いますが、原因を明らかにしてその改善策を考えることによって、次回の製造での再発を防止できます。

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