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衣料品・繊維製品のモノづくり

まずは「モノづくり」について考えていきます。

アパレルメーカーにとってモノづくりとは何か?

衣料品・繊維製品を販売する企業にとって「モノづくり」は非常に重要なことですが、小売店とアパレルメーカーでは、それに求める内容(目的)はそれぞれ異なります。
また、消費者が商品に求める内容もこれらとは異なるものですが、モノづくりという視点においては、小売店と近いものと言えるでしょう。

※ここでは、「小売店」とはアパレルメーカーから完成品を仕入れて販売する企業、「アパレルメーカー」とは商品企画・製造をして小売店に完成品を販売する企業、と定義します。

消費者・小売店にとってのモノづくり

モノづくりに重要な要素は、よく「QCD」と言われます。
 Q:Quality(品質)
 C:Cost(コスト)
 D:Delivery(納期)
この詳細については後で「問題解決(品質改善)の方法」で述べますが、一般的には「Quality(品質)」が最も重要と言われています。

ただ、実際には、消費者や小売店が商品選びの時に品質を一番初めに確認することはあまりなく、消費者の場合は価格が、小売店の場合は価格と納期が重要な要素となります。(デザインや素材の風合いなどは広義で言えば品質となり非常に重要な要素ではありますがここでは論点から外します)
消費者にとって重要なのは、商品を購入してその充足感や効用を得ることであり、品質保証は当然のこと(購入する時の大前提)だからです。

アパレルメーカーにとってのモノづくり

これに対して、アパレルメーカーはどうでしょうか?

アパレルメーカーは、商品を作って、売ることで利益をあげるのが目的です。
そのため、モノづくりは「利益確保の源泉」ということになります。
消費者や小売店が価格に対して敏感なこともよくわかっているため、やはり価格が最も重視される要素になります。
そして、品質が重要なことはわかっていても、お客さまが求める価格や納期が優先になり、つい後回しになってしまうことがよくあります。

ここで問題なのは、お客さまにとって「品質は良くて当然」ということです。
購入前には重視されていなかった品質も、実際に購入された商品で不良が見つかれば、今まで重視していたはずの価格や納期よりも重要になってしまいます。

そして、品質不良の商品は販売できないため、お客さまからクレームを受け、その解決のために多大なコスト(これを「Fコスト」といいます)がかかることになります。
その結果、予定していた利益が吹き飛んでしまうだけでなく、大きな赤字になってしまうこともあります。

このような状況が続くと、アパレルメーカーはあらためて「品質が最も重要である」という方針に立ち戻りますが、実際には忙しい現場の中で優先順位をつける必要があり、やはり品質に十分な業務量が割けない状況は大きく変えられないのが実情です。

それでは、企業規模ごとのアパレルメーカーの現場はどのようになっているでしょうか?

現在のアパレル企業の状況

大手企業

大手企業では、企画部門・営業部門・生産管理部門・品質管理部門など各部署が配置されていますが、経費節減などの影響で人員が少なくなり皆忙しいため細かいところまで目が届かなかったり、十分な時間や経費がかけられず事前準備を簡易化するしかなかったり、という状況が見られます。
また、各部署での縦割りの壁がなかなか壊せず目的の方向が分散化したり、各部署を色々と経験して総合的な判断ができる人が少ないため他部署の状況を理解せず無理を強いたりする状況も見られます。
更に、リストラが行われると、どうしても年収が高くて知識・経験のある高年齢層がその対象になりがちですが、その反動で相談相手のいなくなった残された若い社員が判断に困ったり、無理な計画を立てて行き詰まるということも見られます。
いずれにしても、モノづくりとしては盤石な状態ではなく、常に綱渡りをしている状況と思います。

中小企業

日本のアパレルメーカーはほとんどが中小企業だと言われていますが、中小企業の多くは恒常的な人材不足と人員不足に悩まされています。
ここでは、人材不足とは十分な知識・経験を持った社員が少ないこと、人員不足とはそもそも社員数が少ないことを指しますが、これはアパレル企業で最近特に顕著になってきている問題です。
人材不足の大きな原因としては、品質や生産管理の十分な知識・経験を持った人が高年齢化していて、就業できる人が少なくなってきていることが挙げられます。
人員不足の大きな原因としては、アパレル業界自体が産業として魅力が無くなってきていることで、就業する人が少なくなってきていることが挙げられます。
カリスマ店員を目指すなど、小売店での接客は若い人たちに人気の職業になっている場合もありますが、品質や生産管理は地道な努力・経験を重ねる必要がある職種のため人気がなく、また、業界としてもこれら若い人を積極的に育てる動きがなかったことも原因になっています。
中小企業は大企業に比べて企業ブランド力に欠けていたり、資金力に欠けているなど、社員を募集しても応募が来ない、社員を雇う経費が出せない、という事情もあり、常に脆い基盤でモノづくりをしている状況と思います。


「Fコスト」とは、どういうものでしょうか?

企業にとって最も注意しなければならない「Fコスト」とは?

「Fコスト」は「Failure Cost」のことで、失敗コストとも言われます。

販売した商品に不良点が見つかれば、企業としてはそれを解決しなければなりませんが、そのためにかかる費用は、商品開発や製造にかかる費用の数倍と言われています。

例えば、以下のような費用が考えられます。
①問題解決のための目に見える費用
   ▼不良品の値引き
   ▼不良品の回収(着払いの輸送費用)
   ▼不良品の検品費・補修費・再出荷の輸送費用
   ▼不良品の廃棄(製品原価)
②目に見えない費用
   ▼販売機会損失(得られたはずの利益の損失)
   ▼解決のために要する社員の業務費用
   ▼不良原因の調査や改善対策に要する費用
   ▼解決のために社員の業務が取られ、次の商品開発に遅れが発生
③企業全体への影響
   ▼顧客からの信用・信頼の喪失
   ▼ブランドイメージへの悪影響

不良問題が発生した時に、①の費用が発生するのは容易に想像できるものですが、それだけでも予定していた利益が吹き飛んでしまうものです。
更に、②や③を考えると、一つの不良問題が企業にとってどれほど大きな問題であるか、理解できると思います。

このような不良問題は、開発・製造時に未然に防ぐことが重要です。
上述のように、現在のアパレル企業は品質管理や生産管理に時間や費用をかけにくい状況ではありますが、本来の企業の目的を失わないためには、「品質が最も重要である」ということを改めて留意する必要があります。

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